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激減する公的年金

年金と老後生活

激減する公的年金

年金激減 避けるために

現在は?・・・
給付額 現役時代収入の半分
「こんなに少ないのか」「もっともらえると思っていた」
厚生年金を間もなく受給する人が、社会保険事務所の年金相談を受けての感想だ。予想していた額とのあまりの落差に落胆する人は少なくない。
公的年金は基本的に「現役世代から保険料を徴収し、高年齢に再分配する」という仕組み。年金額は原則、現役世代の収入に連動して変わる。年金相談員は「現役時代の収入の6~7割の年金を受け取れると思っている人が多いようです」と話す。現在は、厚生年金の受給開始年齢が60歳から段階的に引き上げられている途中で、60歳時点では年金の一部しか受け取れない。これも年金額が少ないと感じる理由の一つだ。昭和36年4月以降生まれの男性、昭和41年4月以降生まれの女性が年金を受け取れるのは、65歳からだ。
厚生労働省は現在の年金額の水準を、平均的な収入の会社員と専業主婦の世帯で、「現役時代の約6割」としている。
ただし、現役時代の収入は税金や社会保険料を引いた後の「手取り」なので、いずれも税・保険料を引く前の「総額」で比べると、年金額は現役時代の5割程度になってしまう。保険料の免除・未納期間があれば年金額はさらに減る。
さらに注意が必要なのは、収入によって年金の給付水準が違うことだ。平均月収20万円の世帯の年金は現在17.4万円と高い水準だが、収入が3倍の60万円になっても年金額は約1.5倍の25.9万円。いくら収入が高くても、公的年金の額は30万円程度で頭打ちとなる。
厚生年金には「老後に備えるゆとりがない低所得の人ほど、相対的に手厚い年金を保障する」という所得再分配の仕組みが組み込まれているからだ。収入の高い人が現役世代の水準に近い生活をしようとすれば、その分自分で補う必要がある。

将来は?・・・
出生率・賃金上がらねば減少
現役世代が年金を受け取るころには、さらに厳しくなる。少子高齢化が進む中、年金財政を維持するために、年金の水準は徐々に引き下げられるからだ。
平均的な会社員と専業主婦の世帯で40年加入した場合を比べてみよう。厚生労働省によると、現在は、夫婦合わせた年金額は現役時代の手取り賃金の62.3%に当たる22.3万円。これが2038年には、50.1%、年金額は17.9万円となる見通しで、2050年まで同水準。支給額は、年金の水準低下を実感できるよう、「将来実際に受け取る額」ではなく、現在の水準に換算した額だ。
将来の年金額の計算には、経済情勢や出生率の見通しが必要だ。厚生労働省が描く基本的なシナリオでは、出生率が1.26、賃金は毎年2.5%ずつ上がると見込む。
2007年の出生率は1.34。出生率は少子高齢化の流れを織り込んでいるが、賃金上昇の見通しは、最近の情勢から見ると極めて楽観的だ。厚生労働省は「足元の経済危機を脱すれば、長期的には安定した経済成長と賃金の伸びが見込める」との立場だ。
一方、厚生労働省の前提通り賃金が毎年2.5%ずつ増え続けた場合、現在36歳の人が実際に受け取る年金額は35.9万円、24歳の人は48.2万円まで増える。だが、賃金の伸び悩みが続けば将来の見込み額は大きく下がってしまう。
出生率が改善し、現役世代の賃金上昇率が高くなるほど、年金水準も上向く。仮に出生率が1.55まで改善し、賃金上昇率も2.9%になれば、給付水準は54.6%まで上がる。一方、出生率も下がり経済も停滞すれば、43.1%まで下がり、政府が約束する「現役世代の5割」を下回ってしまう。
上智大学の堀勝洋教授(社会保障論)は「少子化傾向を改善できるか、経済を安定的に成長させられるか、という社会全体の取り組みが、今後の年金の水準を左右することになる」と話す。

対策は?・・・
受給開始年齢 引き上げも
公的年金制度は、将来的に給付水準が徐々に下がる仕組みとなっている。これがうまく機能する限り、年金財政が破綻することは考えにくい。だが、年金の水準が下がり過ぎては、高齢者の生活を支えるには心もとない。
「年金改革のお手本」とされるスウェーデンの公的年金制度も金融危機で積立金の運用が悪化。このままでは来年の年金額を3.7%引き下げざるを得ない状況だ。いくら制度を改革しても、年金を取り巻く環境が悪化すれば給付の維持は難しい。
世界各国の協力期間、国際社会保障協会で研究活動をしているジェンス・シュレマーさんは「公的年金をはじめとする社会保障のシステムを安定させるには、年金だけで暮らす人や失業者、生活保護世帯など『支えられる側』の比率を減らし、生産し、自活できる『支える側』の比率を増やすのが重要」と指摘する。
仮に出生率が高くなっても、若い世代の雇用が不安定だったり、賃金水準が低い状態が続いたりすれば、年金の保険料収入は伸び悩み、年金財政は不安定にならざるを得ない。失業保険の給付などで若い世代が「支えられる側」に回ることもありうる。
一方、高齢化が進んでも、失業率が低く抑えられ、健康な高齢者が働き続けて「支える側」に回れば、年金の水準はそれほど下げずに済む。若い世代が支え手で、高齢者は支えられる側、という固定観念を打ち砕くことが必要だ。
実際にドイツは年金の受給開始年齢を2012年から段階的に65歳から67歳へと引き上げる。フランスでは、高齢者の就労を促して社会全体の生産性を高めることで、年金財政の改善を目指している。
堀教授も「雇用の確保が前提だが、受給開始を65歳からさらに引き上げる分、給付水準を上げるのも選択肢の一つ」と話す。
朝日新聞 (平成21年3月22日)

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